ヘ心の中に、復た羅馬には往かじと誓ひながら、詞に出して爭はんとはせざりき。
 公子は更に語を繼ぎてさま/″\の事をいひ出で、人々のこれに答へなどするひまに一行は早くサレルノ[#「サレルノ」に二重傍線]に到りぬ。我等は先づ一寺院に入りたり。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]進み出でゝいふやう。こゝにてはわれ案内者たることを得べし。これはサレルノ[#「サレルノ」に二重傍線]にてみまかり給ひし法皇グレゴリヨ[#「グレゴリヨ」に傍線]七世(獨帝と爭ひて位を逐《お》はれ、千八十五年此に終りぬ)の遺骨を收めし龕《がん》なり。その大理石像はかしこなる贄卓《したく》の上に立てり。さてこの石棺は歴山《アレキサンドル》大帝の遺骸を藏《をさ》むといふ。公子。何とかいふ、歴山大帝の躯《むくろ》こゝにありとや。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]、我が聞きしは然《しか》なりき、さにはあらずや、と寺僮《じどう》を顧みれば、まことに仰の如しと答ふ。われつら/\棺を見て、否、そは誤りなるべし、歴山大帝の躯こゝに在りといはんは、歴史を蔑《ないがしろ》にするに近し、この浮彫の圖樣は大帝凱旋の行列なれば、かゝる誤を傳へし
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