ィん身を知ることを得たるを喜ぶならんといふ。此挨拶は固《もと》より我心に慊《あきたら》ねど、われは又恩惠のために口を塞がれたり。少年は我方に向ひぬ。さらばわれ自ら我身を紹介すべし。おん身の何人たるは我既に知れり。我名はジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]なり。國王陛下の護衞たる一將校なり。(微笑《ほゝゑ》みつゝ)拿破里《ナポリ》の名族にて、世の人は第一に位すとぞいふ。そは僞にもあらざるべし。就中《なかんづく》わがをばは頗るこれに重きを置けり。おん身の如きを知るは、大いなる幸なり。おん身の才と云ひおん身の吭《のど》と云ひと、猶詞を繼がんとするを、フアビアニ[#「フアビアニ」に傍線]は押しとゞめて、止めよ/\、さる挨拶を受くることは猶不慣なるべし、紹介とやらんも最早濟みたるべければ、夫人の許に往かん、かしこには又和議といふ難關あり、おん身仲裁の煩を避けずば、今の辯舌を殘し置きて其時の用に立てよと云ひつゝ、彼士官と我とを延《ひ》きて、旅店の一間《ひとま》に進み入りぬ。われはこの生客《せいかく》の前にて、我身の上の大事を語らるゝを喜ばねど、二人は親しき友なるべければと自ら思ひのどめて、遲れ勝《
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