陂メたれ。細君は待ち兼ね給へり。かく云ひつゝ我を視て、扨《さて》は新顏の即興詩人を伴ひ歸りしか、チエンチイ[#「チエンチイ」に傍線]といふなるべし、違《たが》へりやと云ふ。公子はチエンチイ[#「チエンチイ」に傍線]とはと我面を顧みたり。われ。そは我が番附に書かせし名なり。公子。然《しか》なりしか。そは責めてもの思案なりき。少年。フアビアニ[#「フアビアニ」に傍線]、御身は此人のいかに戀愛を歌ひしを想ひ得るか。昨夜おん身が「サン、カルロ」座に往かざりしこそ遺憾なれ。めでたき才藝にこそとて、我と握手し、我と相見る喜びを述べ、又フアビアニ[#「フアビアニ」に傍線]に向ひて云ふ。今宵はおん身に晩餐の馳走を所望すべし。この好謳者《かうおうしや》をおん身等夫婦にて私せんとはせじ。公子。問はるゝまでもなく、おん身は何時にても我方《わがかた》に歡迎せらるゝならずや。少年。さるにてもおん身は、何故に猶我等二人のために紹介の勞を取らずして、互にその名を知ることを得ざらしむるぞ。公子。そはいらぬ禮儀なり。われは熟《よ》く渠《かれ》と相知れり。汝は我友なれば、渠は特《ことさ》らに紹介をば求めざるべし。渠は唯だ
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