Iオ[#「サツフオオ」に傍線]との傳は今煩を憚《はゞか》りて悉く註せず。)看客は皆泣けり。拍手の聲は狂瀾怒濤の如く、幕一たび墮ちて後、われは二たび幕の外に呼び出されぬ。
喜は身に滿ち兼ねて胸を壓せり。舞臺を下りて、人々の來り賀するに逢ひし時、われは痙攣《けいれん》のさましたる啼泣を發したり。此夕サンチイニイ[#「サンチイニイ」に傍線]、フエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]及二三の俳優は我が爲めに小筵《せうえん》を開けり。我心は嬉《たのし》みたれど我舌は緘《むす》ぼれたりき。フエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]打興じて曰ふやう。此男は一の明珠なり。その一失は第二のヨゼツフ[#「ヨゼツフ」に傍線]たるにあり。(ヨゼツフ[#「ヨゼツフ」に傍線]は童貞女の夫にして耶蘇の義父なり。)盍《なん》ぞ薔薇を摘まざる、その凋落《てうらく》せざるひまに。
夜更けて後客舍に歸り、聖母と救世主との我を棄て給はざりしを謝して、いと穩なる夢を結びつ。
人火天火
翌朝は心地|爽《さはや》かに生れ更《かは》りたる如くにて、われはフエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]に對して心のうちの喜を語ることを得たり
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