tりたる如し。蜃氣樓よと漁父等は叫びて、相|指《ゆびさ》して嬉《たのし》み笑へり。彼の漁父の子のみは獨り笑はざりき。知らずや、かの樓閣はわが昔少女と共に遊び暮しゝ處なるを。懷舊の念しきりにして、戀慕の情止むことなく、雙眸《さうぼう》涙に曇る時、島國は忽ち滅《き》えたり。月あかき宵の事なりき。島國は又湧き出でぬ。忽ち一隻の舟ありて、漁父等の立てる岬《みさき》の下より、弦《つる》を離れし征箭《さつや》の如く、波平かなる海原を漕ぎ出で、かの怪しき島國の方に隱れぬ。黒雲空を蔽ひて、海面には暗緑なる大波を起し、潮水倒立して一條の巨柱を成せり。須臾《しゆゆ》にして雲|斂《をさ》まり月清く、海面|復《また》た平かになりぬ。されど小舟は見えざりき。彼漁父の子も亦あらずなりぬ。歌ひ畢《をは》るとき、喝采の聲前に倍し、我膽力は漸く大に、我|興會《きようくわい》は漸く高し。
第三曲の題はタツソオ[#「タツソオ」に傍線]なりき。われは一たびタツソオ[#「タツソオ」に傍線]たりしことあり。レオノオレ[#「レオノオレ」に傍線]は即ちアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]なり。我等はフエルララ宮中に相見たり。わ
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