ニに戀しく懷《なつ》かしきこと限なく、人知らぬ愛に胸を苦めたりき。漁父は童子を伴ひて海に往き、艫《ろ》を搖《うごか》し帆を揚げ、暴風と爭ひ怒濤と鬪ふことを教へつ。年|長《た》けて後、この少年の今は影だに見せぬ昔の友を懷ふ情は愈※[#二の字点、1−2−22]深くのみなりゆきぬ。月清く波靜なる夜半に、獨り舟中にあるときは、ともすれば艫を搖す手のおのづから休み、澄み渡りて底深く生《お》ふる藻のゆらめくさへ見ゆる水にきと目を注《つ》けて、瞬《またゝき》もせず打目守《うちまも》ることあり。かゝる時は昔の少女、その嬌眸を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みひら》きて水底《みなそこ》より覗き、或は頷《うなづ》き或は招けり。とある朝漁村の男女あまた岸邊に集ひぬ。そは旭日の波間より出でんとする時、一箇の奇《く》しく珍らしき島國のカプリ[#「カプリ」に二重傍線]に近き處に湧き出でたればなり。飛簷《ひえん》傑閣隙間なく立ち並びて、その翳《くもり》なきこと珠玉の如く、その光あること金銀の如く、紫雲棚引き星月|麗《かゝ》れり。現《げ》にこの一幅の畫圖の美しさは、譬へば長虹を截《た》ちてこれを彩《いろど
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