ノまどろむことを得たり。
我が「サン、カルロ」の劇場に登るべき日は明日《あす》となりぬ。これを待つ疑懼《ぎく》の情と、さきの夜戀の敵に出逢ひたる驚愕の念とは我をして暫くも安んずること能はざらしむ。わが聖母《マドンナ》其他の諸聖を祈る心の切《せち》なりしこと此時に過ぐるはなかりき。われは寺院に往きて、彼の救世者流血の身に擬したる麪包《パン》を乞ひ受け、その奇《く》しき力の我を清淨にし我を康強にせんことを祷《いの》りぬ。尊き麪包は果して我に多少の安堵を與へぬ。されどこゝに最も心にかゝる一事あり。そはアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の此地にあるにはあらずや、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]はこれに隨ひて來たるにはあらずやといふ疑問なりき。既にしてフエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]は我が爲めに偵知して、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]のこゝにあらず、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]の四日前に單身こゝに到りしを報ず。友は綿密に市《まち》の來賓簿を閲《けみ》しくれたるなり。サンタ[#「サンタ」に傍線]の熱は未だ痊《い》えず、されど明日《あす》の興行には必ず往かん
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