烽フと覺しく、進み寄りて手まねするに、牧者は我等にその食を分たんといふ。水牛の乾酪と麪包《パン》とにて飮ものには驢の乳あり。われは快く些の食事をしたゝめしに、馬夫《まご》は手まねして別を告げたり。さて牧者のいふやう。この徑《こみち》を下りゆき給へ。只だ山を左に見て行き給はゞ、小河の流に逢ひ給はん。そは山より街道に出づる水なり。霧晴れなば、そこより街※[#「木+越」、第3水準1−86−11]《なみき》の長く續けるを見給ふならん。流に沿ひて街※[#「木+越」、第3水準1−86−11]の方へ往き給はゞ、程なく街道の側なる廢寺の背後《うしろ》に出で給はん。その寺今は「トルレ、ヂ、トレ、ポンテ」とて旅籠屋《はたごや》となりたり。目の暮れぬ内にテルラチナ[#「テルラチナ」に二重傍線]に着き給ふべしといひぬ。我は此人々に報《むくい》せんとおもふに、拿破里にて受取るべき爲換《かはせ》の外には、身に附けたるものなし。されど財布をこそ人にやりつれ、さきに兜兒《かくし》の裡《うち》に入れ置きし「スクヂイ」二つ猶在らば、人々に取らせんものをと、かい探ぐるにあらず。馬夫には領《えり》なる絹の紛※[#「巾+兌」、
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