ュ紅に染まりゆきて、山々の色の青|天鵝絨《びろうど》の如くなるを視き。偶※[#二の字点、1−2−22]《たま/\》山腹に火を焚くものあり。その黄なる※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]は晴天の星の如くなりき。われは覺えず驢背に合掌して、神の惠の大なるを謝したり。
 われは漸くにして媼の賜《たまもの》を見ることを得き。その一通の文書は羅馬《ロオマ》警察|衙《が》の封傳《てがた》にして、拿破里《ナポリ》公使の奧がきあり。旅人の欄には分明に我氏名を注したり。一通は又拿破里フアルコネツトオ[#「フアルコネツトオ」に傍線]銀行に振り込みたる爲換《かはせ》金五百「スクヂイ」の劵なり。これに添へたる紙片に二三行の女文字あり。手負ひたる人の上をば、みこゝろ安く思されよ。遠からぬ程に癒《い》ゆべしと申すことに侍り。されどしばらくは羅馬に歸り給はぬこそよろしく侍らめとあり。フルヰア[#「フルヰア」に傍線]は我を欺かざりき。わがためには、これに増す神符あらじとおもひぬ。
 道は少し夷《たひらか》になりぬ。とみれば一群の牧者あり。草を藉《し》きて朝餉《あさげ》たうべて居たり。我馬夫は兼て相識れる
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