@葉《はちすは》の如くなりき。忽ち隻翼は又|聳《そばだ》ち起り、竹を割《さ》く如き聲と共に、一翼はひたと水に着き、一翼は劇《はげ》しく水を鞭《う》ち沫《しぶき》を飛ばすと見る間に、鳥も魚も沈みて痕なくなりぬ。母鳥は悲鳴して、巖角なる一隻の雛を顧みるに、こもいつか在らずなりて、首を仰いで遠く望めば、只だ一黒斑の日に向ひて飛ぶを見き。母鳥は悲を轉じて喜となしたり。その胸は高く躍りて、その聲は折るれども撓《たわ》まぬ力を歌ひぬ。我歌はこゝに終り、喝采の聲は座に滿ちぬ。獨り我は※[#「目+寅」、第4水準2−82−14]《またゝき》きもせで、龕《がん》の前なる老女をまもり居たり。そは我が歌ひて半に至りし時、老女の絲繰る手やうやく緩く、はては全く歇《や》みて、暗き瞳の光は我面を穿《うが》つ如く、こなたに注がれたればなり。又我が能く少時の夢を喚《よ》び起して、この詩中に入るゝことの、かくまで細かなることを得しは、この老女の振舞|與《あづか》りて力ありければなり。
 媼《おうな》は忽ち身を起し、健《すこや》かなる歩みざまして我前に來て云ふやう。能くも歌ひて、身のしろを贏《か》ち得つるよ。吭《のど》の響
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