ヤを輓《ひ》かんとてなりき。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]は聲を顫《ふるは》せてこれを制せんとしつれど、その聲は萬人のその名を呼べるに打ち消されぬ。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]は歌女を車に載せ、おのれは踏板に上りて説き慰めたり。我も轅《ながえ》を握りてかの少年の群と共に喜びぬ。惜むらくは時早く過ぎて、たゞ美しかりし夢の痕を我心の中に留めしのみ。
歸路に珈琲《コーヒー》店に立寄りしに、幸にベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]に逢ひぬ。羨むべき友なるかな。彼はアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]に近づき、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]ともの語せり。友のいはく。アントニオ[#「アントニオ」に傍線]よ。奈何《いか》なりしぞ。汝が心は動かずや。若し骨焦がれ髓《ずゐ》燃えずば、汝は男子にあらじ。さきの年我が彼に近づかんとせしとき、汝は實に我を妨げたり。汝は何故にヘブライオス[#「ヘブライオス」に二重傍線]語を學ぶことを辭《いな》みしか。若し辭まずば、かゝる女と並び坐することを得しならん。汝は猶アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の我|猶太《ユダヤ》少女
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