ノは燃ゆる海綿を貼《は》り、耳後には小き烟火具《はなび》を裝ひ、腋《わき》には拍車ある鐵板を懸けたり。口際に引き傍《そ》ひたる壯丁《わかもの》はやうやくにして馬の逸《はや》るを制したり。號砲は再び鳴りぬ。こは埒《らち》にしたる索を落す合圖なり。馬は旋風《つむじかぜ》の如く奔《はし》りて、我前を過ぎぬ。幣《ぬさ》の如く束ねたる薄金《うすがね》はさら/\と鳴り、彩りたる紐は鬣《たてがみ》と共に飄《ひるがへ》り、蹄《ひづめ》の觸るゝ處は火花を散せり。かゝる時彼鐵板は腋を打ちて、拍車に釁《ちぬ》ると聞く。群衆は高く叫びて馬の後に從ひ走れり。そのさま艫《とも》打《う》つ波に似たり。けふの祭はこれにて終りぬ。

   歌女《うため》

 衣《きぬ》脱《ぬ》ぎ更へんとて家にかへれば、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]訪《とぶら》ひ來て我を待てり。われ。いかなれば茲《こゝ》には來たる。さきの婦人をばいづくにかおきし。友は指を堅《た》てゝ我を威《おど》すまねしていはく。措《お》け。我等は決鬪することを好まず。さきに邂逅《いであ》ひたるときの狂態は何事ぞ。言ふこともあるべきにかゝることをばなど言ひた
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