といふことを知らねばなりけり。
街のはつる處に、「コリゼエオ」(大觀棚《おほさじき》)の頂見えたるとき、われ等はかの洞の方へゆくにや、と畫工に問ひしに、否、あれよりは※[#「二点しんにょう+向」、第3水準1−92−55]《はるか》に大なる洞にゆきて、面白きものを見せ、そなたをも景色と倶《とも》に寫すべし、と答へき。葡萄圃の間を過ぎ、古の混堂《ゆや》の址《あと》を圍みたる白き石垣に沿ひて、ひたすら進みゆく程に羅馬の府の外に出でぬ。日はいと烈しかりき。緑の枝を手折りて、車の上に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]し、農夫はその下に眠りたるに、馬は車の片側に弔《つ》り下げたる一束の秣《まぐさ》を食ひつゝ、ひとり徐《しづか》に歩みゆけり。やう/\女神エジエリア[#「エジエリア」に傍線]の洞にたどり着きて、われ等は朝餐《あさげ》を食《たう》べ、岩間より湧き出づる泉の水に、葡萄酒混ぜて飮みき。洞の裏《うち》には、天井にも四方の壁にも、すべて絹、天鵝絨《びろおど》なんどにて張りたらむやうに、緑こまやかなる苔生ひたり。露けく茂りたる蔦《つた》の、おほいなる洞門にか
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