Bされど我心は決して撓《たわ》むことなし。我は少女が上を忘るゝこと能はず。友よ。我に力を借せ。昔エネエアス[#「エネエアス」に傍線]を戀人に逢せしサツルニア[#「サツルニア」に傍線]とヱヌス[#「ヱヌス」に傍線]とをば、汝が上とこそ思へ。いざ我をあやしき巖室《いはむろ》に誘はずや。われ。そは我身にはふさはしからぬ業なりと覺ゆ。さはれおん身は猶いかなる手段ありて、我をさへ用ゐんとするか、かゝる筋の事に、この身用立つべしとは、つや/\思ひもかけず。士官。否々。汝が一諾をだに得ば、我事は半ば成りたるものぞ。ヘブライオス[#「ヘブライオス」に二重傍線]の語は美しき詞なり。その詩趣に富みたること多く類を見ずと聞く。汝そを學びて、師には老いたるハノホ[#「ハノホ」に傍線]を撰べ。彼翁は廓内にて學者の群に數へられたり。彼翁汝がおとなしきを見て、娘にも逢はせんをり、汝我がために娘に説かば、我戀何ぞ協《かな》はざることを憂へん。されど此手段を行はんには、決して時機を失ふべからず。駈足《かけあし》にせよ歩度を伸べたる驅足にせよ。燃ゆる毒は我脈を循《めぐ》れり。そは世におそろしき戀の毒なり。異議なくば、あす
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