に落つること多し。されど邪宗の人は肉體にも惡魔にも誘はるゝことなしと答へき。
 母上はこれを聞きて復た言ふべきこともあらねば、便《びん》なき少年の上をおもひて大息《といき》つき給ひぬ。かたへ聞《ぎき》せしわれは泣き出しつ。こはかの人の永く地獄にありて※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]に苦められむつらさをおもひければなり。かの人は善き人なるに、わがために美しき畫をかく人なるに。
 わが穉きころ、わがためにおほいなる意味ありと覺えし第三の人はペツポ[#「ペツポ」に傍線]のをぢなりき。惡人《あくにん》ペツポ[#「ペツポ」に傍線]といふも西班牙磴《スパニアいしだん》の王といふも皆その人の綽號《あだな》なりき。此王は日ごとに西班牙磴の上に出御《しゆつぎよ》ましましき。(西班牙廣こうぢよりモンテ、ピンチヨオ[#「モンテ、ピンチヨオ」に二重傍線]の上なる街に登るには高く廣き石級あり。この石級は羅馬の乞兒《かたゐ》の集まるところなり。西班牙廣こうぢより登るところなればかく名づけられしなり。)ペツポ[#「ペツポ」に傍線]のをぢは生れつき兩の足痿《な》えたる人なり。當時そを十字に組みて折り
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