やさしくしよう、あたしのいのちを、あの方にささげよう。」
 ところが、そのうちに、王子がいよいよ結婚することになった、おとなりの王国のきれいなお姫さまをお妃《きさき》にむかえることになった、といううわさが立ちました。そのために、王子さまは、りっぱな船を一そう、おしたてさせになったともいいました。
 こんどの王子の旅行は、おもてむき、おとなりの王国を見学《けんがく》にいかれるということになっているけれど、じつは王さまのお姫さまにあいにいくのだということでした。たくさんのおともの人数《にんず》もきまっていました。でも、人魚のひいさまは、つむりをふって、にっこりしていました。
 王子の心は、たれよりもよく、このひいさまに分かっているはずでした。
「ぼくは旅をしなければならないよ。」と、王子は人魚のひいさまにいいました。「きれいな王女のお姫さまにあいにいくのさ。おとうさまとおかあさまのおのぞみでね。だが、ぜひともそのお姫さまをぼくのおよめにもらって来いというのではないよ。だが、ぼくはそのお姫さまが好きにはなれまいよ。おまえがそれにそっくりだといった、あのお寺のきれいなむすめには似ていないだろう
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