は、くちずさみに歌をうたいだしました。その歌は『なぜに、わたしは、むことらぬ』といった歌でした。そこで、『なるほど、それももっともだわ。』と、いうわけで、王女さまはけっこんしようとおもいたちました。でも夫《おっと》にするなら、ものをたずねても、すぐとこたえるようなのがほしいとおもいました。だって、ただそこにつっ立って、ようすぶっているだけでは、じきにたいくつしてしまいますからね。そこで、王女さまは、女官《じょかん》たち、のこらずおめしになって、このもくろみをお話しになりました。女官たちは、たいそうおもしろくおもいまして、
『それはよいおもいつきでございます。わたくしどもも、ついさきごろ、それとおなじことをかんがえついたしだいです。』などと申しました。
「わたしのいっていることは、ごく、ほんとうのことなのですよ。」と、からすはいって、「わたしには、やさしいいいなずけ[#「いいなずけ」に傍点]があって、その王女さまのお城に、自由にとんでいける、それがわたしにすっかり話してくれたのです。」と、いいそえました。
いうまでもなく、その、いいなずけというのはからすでした。というのは、にたものどう
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