時代、デンマルクで印刷業をはじめた人ではありませんか。」
「そうですとも。この国でははじめての印刷屋さんですよ。」と、学士が答えました。
ここまではどうにかうまくいきました。こんどは町人のひとりが、三年まえ流行した伝染病の話をしだしました。ただそれは一四八四年の話でした。参事官はそれを一八三〇年代はやったコレラの話をしているのだとおもいました。そこで会話は、どうにかつじつまがあいました。一四九〇年の海賊戦争もつい近頃のことでしたから、これも話題にのぼらずにいませんでした。で、イギリスの海賊船が、やはり同じ波止場か船をりゃくだつしていった、とその男は話しました。ところで、*一八〇一年の事件をよく知っている参事官は、進んでその話に調子をあわせて、イギリス人に攻撃をしかけました。これだけはまずよかったが、そのあとの話はそううまくばつがあいませんでした。ひとつひとつに話がくいちがいました。学士先生は気のどくなほどなにも知りませんでした。参事官のごくかるく口にしたことまでが、いかにもでたらめな、気ちがいじみた話にきこえました。そうなると、ふたりはだまって顔ばかりみあわせました。いよいよいけない
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