ました。
「いや、わたしのいうのは、このごろはやる新作の小説のことですよ。」
「ははあ。」と、得業士はにっこりしながら、「あれもなかなか気のきいたものでして、宮中ではずいぶん読まれていますよ。*王様はとりわけ、アーサー王と円卓《えんたく》の騎士の話を書いた、イフヴェンとゴーディアンの物語を好いていられます。それでご家来の人達とあの話をして興《きょう》がっていられます。」
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*デンマルクの詩人ホルベルのデンマルク国史物語に、ハンス王が寵臣のオットー ルードとアーサー王君臣の交りについてとんち問答した話がかいてある。なお、「その日その日の物語」は、文士ハイベルの母のかきのこした身の上話。
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「それはまだ読んでいません。」と、参事官はいいました。「ハイベルが出した新刊の本にちがいありませんね。」
「いや、ハイベルではありません。ゴットフレト フォン ゲーメンが出したのです。」と、学士は答えました。
「へへえ、その人は作者ですか。」と、参事官がたずねました。「ゴットフレト フォン ゲーメンといえば、すいぶん古い名まえですね。あれはなんでも、ハンス王
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