、なんでも知ってて、
その上、来年のことまでわかって、
四十年さきまでみとおしの神わざ、
そのくせ、それをいうのがきらい、
ねえ、来年はどうなりますか、
なにかかわったことでもないか、
お国の大事か、ぼくの身の上、
やっぱり、おばあちゃん、なんにもいわない、
それでもせがむと、おいおいごきげん、
はじめのがんばり、いつものとおりさ、
もうひと押しだ、かわいい孫だ、
ぼくのたのみをきかずにいようか。
「ではいっぺんならかなえてあげる」
やっと承知で目がねを貸した。
「さて、どこなりとおおぜいひとの
あつまるなかへでかけていって
ごったかえしを、目がねでのぞくと、
とたんに、それこそカルタの札の
うらないみたいに、なんでも分かる
さきのさきまで、手にとるように。」
おれいもそこそこ、みたいがさきで、
すぐかけだしたが、さてどこへいく。
長町通《ランケリニエ》か、あそこはさむい、
東堤《エスデルガーデ》か、ペッ、くされ沼
それでは、芝居か、こりゃおもいつき、
出しものもよし――お客は大入。
――そこでまかり出た今夜の催し、
おばばの目がねをまずこうかけて、
さあながめます――お逃けなさるな――
ほんに、皆さま、カルタの札で
未来のうらない、あたればなぐさみ――
ではよろしいか。ご返事ないのは承知のしるし。
さて、ご好意のお礼ごころに、
目がねでみたこと申しあける。
では、皆さまの、じぶんのお国の、未来のひみつ、
カルタのおもてに読みとりまする。
(目がねをかける)
ははん、なるほど、いや、わらわせる。
珍妙《ちんみょう》ふしぎ、お目にかけたい。
カルタの殿方、ずらりとならんで、
お行儀のいい、ハートのご婦人。
そちらに黒いは、クラブ[#「クラブ」は底本では「タラブ」]にスペード
――ひと目にずんずん、ほら、みえてくる――
スペードの嬢ちゃま、ダイヤのジャックに、
どうやらないしょのうち明け話で、
みているこっちが酔うよなありさま。
そちらはたいしたお金持そうな――
よその国からお客がたえない。
だが、つまらない――どうでもよいこと。
では、政治向。おまちなさいよ――新聞種《しんぶんだね》だ――
のちほどゆっくり読んだらわかるさ。
ここでしゃべると、業務の妨害、
晩のごはんのたのしみなくなる。
そんならお芝居――初演の新作。おこのみ流行。
いけない、これは――支
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