てがたがた、ものおきをかたづけにきました。そして箱をどけて、もみの木をはこびだしました。それから、かなりらんぼうに床《ゆか》のうえになげだしました。やがてひとりの下男が、それをそのままはしごだんのほうへひきずっていきました。こうしてもみの木は、もういちど、日の目を見ることができました。
「さあ、また生《い》きかえったぞ。」と、もみの木はおもいました。もみの木は、すずしい風に吹かれて、朝のお日さまの光にあたりました。――そこはほんとうに家《いえ》のそとの、にわのなかでした。いろいろなことが、目まぐるしいほど、はたで、どんどんおこってくるので、もみの木はすっかり、じぶんのことをわすれてしまいました。ぐるりにはたくさん、目につくものがありました。このにわは、すぐ花ぞのにつづいていて、そこには、いろいろの花が、いっばい咲いていました。ほんのりいいにおいのするばらが、ひくいかきねにからんでいましたし、ぼだいじゅも、ちょうど花ざかりでした。つばめたちは、その上をとびまわりながら、さえずっていました。
「びいちくち、ぴいちくち、うちのひとがかえってきましたよ。」
けれどもそれは、もみの木のことでは
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