きりなのかい。」と、おやねずみはいいました。
「ああ、これひとつさ。」と、もみの木はこたえました。「なにしろわたしはうまれていちばんしあわせだった晩に、そのおはなしをきいたのだからね。けれど、そのときは、それがそんなにしあわせだとはしらなかった。」
「ずいぶん、つまらないおはなしだなあ。君は豚《ぶた》のあぶらみとか、あぶらろうそくというようなものはなんにもしらないのかね。たべものやのはなしは、しらないのかね。」
「しらないねえ。」と、もみの木はこたえました。
「そう。じゃあどうもありがとう。」と、おやねずみたちはいって、なかまのところへかえっていきました。とうとう、小ねずみたちもいってしまいました。すると、もみの木は、またひとりぼっちになったので、ためいきをつきながらいいました。
「げんきのいい、小ねずみたちが、わたしをとりまいて、おもしろそうに、はなしをきいてくれたのは、ほんとにゆかいだったなあ。だが、それもおわりさ。でも今にここからはこびだされれば、せいぜいものをたのしくかんがえることだ。」
ところで、いつそんなことになったでしょうか。
なるほど、あくる朝、大勢《おおぜい》し
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