鸚鵡の思ひ出
牧野信一
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)滾《こぼ》して
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)チビ/\と
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[#5字下げ]一[#「一」は中見出し]
「いくら熱心になつたつて無駄だわよ。――シン。鸚鵡だからつて必ず言葉を覚えるときまつてはゐまいし。」
アメリカ娘のFは、さう朗らかに笑つて私の肩を叩いた。足音を忍ばせて彼女は私の背後に近寄つたのだらう、声で、私は初めてFに気づいて振り反つた。
「僕は何もグリツプに言葉を教へようとしてゐたんぢやないさ。」
グリツプと称ふのはFが飼つてゐる此の鸚鵡の名前である。
「お前はまア何といふ嘘つきだらう! 教へようとなんてしてゐないツて? 妾はさつきからちやんと鍵穴から覗いて見てゐたんだよ。お前はグリツプの前で、指を出したり、顔を顰めたり、独り言を呟いたり、疳癪を起して二ツ
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