、漂流者の住みさうな小屋にもぐつて、
「俺ニハ一文ノ金モナクナツタヨ。はつどつぐ[#「はつどつぐ」に傍点]デモ捏ネテ売リ出サウカシラ?」
 と、たしかにこれもフリガン君と見るより他はない茫然たる無表情の貌で目を丸くしてゐた。
「心細イコトヲ云ハナイデ欲イヨ、だつでい――僕トイフ息子ノアルコトヲ忘レタンデスカ?」
 私は胸を張り出して、大いに慰めた。阿父と英語の会話をとり交したのは全く暫くぶりだつたが、やはりこの方が具合が好かつた。――既にして私は再び明朗至純なる文学青年としての心懐をとり戻してゐた折からであつたから、人間の姿の本来なるものゝ純粋さこそは、寧ろその得意の場合よりも、失意の上にのみ釈然として認め得らるゝものであるといふ自信を持つてゐた。
「オ金モ、今日ダツテ、コレグラヒ持ツテ来マシタ、マタ来月モ持ツテ来ルデセウ、だつでいニ贈リタイノデアリマス。」
 私はポケツトから、あるだけの紙幣をつかみ出して五十円を並べたりした。すると彼は、心細気に横を向いて、
「俺あ、いらねえよ。折角お前えがとつたものなんだから服でもつくつたら好からう。」
 と今度は、明瞭な方言で唸つた。そして決して
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