何時にない颯爽たる様子が、恰度|往来《ゆきき》の馬を伴れた村人の真剣な眼付きに匹敵して決しておくれるところのない殺気を含んでゐた。――何処の馬の今年のコンデイシヨンは何うだ? といふ観察をするために往来の人々は互ひに疑念に富んだ眼を挙げて、互ひの馬の様子を窺ふのであつたから、事更に、敵方の油断を盗むために呑気らしく馬車を曳かせたり、枯草を積んだりしながら秘かに、着々と訓練の鞭をふるつてゐる権謀家も多かつた。だから、滝本達の一行が、そんな装ひで隊伍を組んで行くところを反つて意味あり気に打ち眺めて、
「仲々、何うも御精が出ますな!」とか、
「騎手のそろつたところは見事だが――」
馬の数が足りないであらう! などゝ嘲りを送る者もあつた。
「騎手が足りないで困つてゐる篠谷や堀口なんていふお大尽があるかと思へば、他所の馬を借り出して……」
河の淵で馬の体を洗つてゐた男が、滝本の方を向いて、そんなことを云ひかけた時、
「これがね――君!」
と滝本は傲然として云ひ返した。「都合に依つたら俺達の組ぢや、この同勢がこのまゝ今年の競馬に出るかも知れないんだぜ、此方の云ひ分次第では馬も悉く吾々のものに
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