り何かして来るんだから、二時間位ひはかゝるでせうね。――充分考へる暇があるぢやありませんか。」
「あれ――あたしだつて、仲々厄介だつたわよ、持つて来るのに――。折角持つて来てあげて、あんな顔なんてされてゐるんぢやつまらなかつたわ。」
「ほんとうにね――メイちやん。」
「ぢや、二時間だね。大丈夫二時間だね、二時間目に此処で出会ふことにしよう――よしツ、行つて来給へ。」
 と私は気分を取り直して、二人のレデイを快よく見送り、
「では、その間俺は、何処かの地下室で時を消して来よう。」
 と呟きながら、妙に細長い箱を抱へて、すた/\と大股で待合所を出て行きました。



底本:「牧野信一全集第四巻」筑摩書房
   2002(平成14)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「時事新報」時事新報社
   1930(昭和5)年6月27日、29日、30日
初出:「時事新報」時事新報社
   1930(昭和5)年6月27日、29日、30日
入力:宮元淳一
校正:門田裕志
2010年1月17日作成
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