込んであるといふ鞄を大きく振りながら、歩調を合せて、さへぎるものもない廣々として[#「て」はママ]砂原を颯々と歩きはじめた。
「こんな下駄、棄てゝ、靴だけ出してよ、歩き憎いわ。」
「――穿かせてやらう、肩につかまりな。」
「サンドヰツチ、喰べようか。」
「胸が一杯だ。」
 と隱岐は應へた。



底本:「鬼涙村」復刻版、沖積舎
   1990(平成2)年11月5日発行
底本の親本:「鬼涙村」芝書店
   1936(昭和11)年2月25日発行
※「?」や「!」のあとは普通全角1字分開けてあります。底本では空白マスがあったりなかったりしていますが、底本通りとしました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※底本で「ゝ」と「ゞ」を混同して使用していると思える箇所がありますが、底本通りとしました。
入力:地田尚
校正:小林繁雄
2002年11月10日作成
2003年6月22日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作
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