る、けれど、あれならば遠慮なく叩けると見えて、継けざまに力一杯打つてゐる――左う思ふと私は、しかし、不思議な遣瀬なさに襲はれて来て見返るのも堪へ難くなつたので、蝎形の流星が銅像の頭の上に消えかかるのをチラリと見たまま、慌てて居酒屋の中へ飛び込まうとした時、ひよいと軒先を見あげると、太鼓の看板が提灯の蔭に寂しくぶらさがつてゐた。そして、太鼓の掛る鍵輪の個所には小さな、新しい南京錠が降してあるのを、私は見出した。



底本:「牧野信一全集第五巻」筑摩書房
   2002(平成14)年7月20日初版第1刷発行
初出:「新潮」新潮社
   1932(昭和7)年10月1日発行
入力:宮元淳一
校正:伊藤時也
2006年9月17日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全22ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 信一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング