かだつたが、あの時若し老婆に出遇はなかつたならば? といふことは誰も口にしなかつた。娘はドリアンに乗つて一先づ帰つたが、時々町の便りを携へて私達を訪れてゐる。
私達は辛うじて生活の安定を得た。
私は、此処で、「ガリバー旅行記」「ラマンチアのドンキホーテ」「ピルグリムス・プログレツス」等の遍歴物語を読み、そして私にとつて、久しい懸案であつたところの「山彦の街」と題する至極浪漫的な創作の稿を起した。
底本:「牧野信一全集第四巻」筑摩書房
2002(平成14)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「若草 第六巻七号」宝文館
1930(昭和5)年7月1日発行
初出:「若草 第六巻七号」宝文館
1930(昭和5)年7月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:宮元淳一
校正:門田裕志
2010年1月17日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さ
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