つゞけた
戦つて戦つて そして凱旋したあかつきは
吾等はおのがじし花嫁を選ばう
その乳は吾等の子孫の心臓を
勇気をもつて満すべき血とならう
おゝ 時は流れる
いまはのきはに吾等は微笑《わら》はう
フアラモンよ
………………
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 私は、ノルマンデイの海賊の|戦ひの唄《バルヂン》を、横笛で吹奏した。そしてドリアンに打ち跨つた。その間に戦器を積んだ三台の馬車が用意されると、それに十五騎の連中が分乗して、鳴りを鎮めて出発した。
 振り返つて見ると妻とメイ子が切りに腕を振つてゐた。笛を高くあげて呼応すると、影が長槍のやうに伸びて、彼女等の胸にもとゞきさうであつた。月は行手の山の蔭に沈まうとしてゐるらしかつた。
 音無家の屋根が眼下に見降せる丘の上まで来ると、私は馬上からアメリカ・インヂアンのアツシユの弓を満月と振りしぼつて、ひようと放つた。一片の詩片を結んだ矢は、流星に見紛ふ弾道を描いて、ピラミツド型の屋根に落ちた。
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“|But this fold flow'ret climbs the hill《この花こそは山にも攀ぢよ》,

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