轤黷ワいとして、やさしくもする、気味の悪い手紙も寄す……凡て、自分が知らん顔をしてゐればこそである。これで若し自分が、いつか周子から浴せられたやうな雑言を、一寸でも洩したならば、もうお終ひだ。ぢや、どうとでも勝手にしたら好いだらう――と、斯う突ツ放されたら、俺には訴へどころがないんだ。親爺は、ゐないし――か! 周子の阿母にでも訴へるのか! そして俺は、どうする、みすみす阿母に棄てられて、どうなる、……阿母だつて、悲しいだらう、俺だつて、悲しからうさ、これでも。――阿母だけは、お前の世話にならないでも好いやうにして置く――と、常々アメリカ勘定の親父は、俺に云つて、アメリカ勘定嫌ひの俺の顔を顰めさせたが……成る程なア! 親父が死んだら、屹度俺が彼女に反抗心を起すだらうといふ懸念があつたんだな! 大丈夫だよ、ヘンリー阿父さん、あなたのお蔭で私は、金が無一物になつてしまつたんだから、うつかり阿母に反抗心なんて現はせやしないよ、ハヽヽ、うまくいつてゐやアがらア、ヘンリーさんの計画が、失敗に終らなかつたのは、これ位ひのものかね。だが、阿母の方だつて、もうそろそろ欠乏らしいぜ……でも、好いよ、――安
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