も彼と一処になつて、そんな馬鹿な話でも、彼と同じ程度に笑へたものだつた。
「明日あたり僕は、帰らなければならないんだがな!」
「嘘々!」
彼は、甘えでもするやうに云つた。
「愚図/\してゐると、また勘当されるかも知れない。」
「勘当されたら、また先のやうに俺の処へ来てゐれば好いぢやないか。」
「御免/\、君には、もうそれ位ひの予猶だつてありやアしないぜ――なるべく家から金を取らないやうにし給へよ。」
「でも、今年一杯位ひなら大丈夫だらう。」と彼は、事の他熱心な眼を挙げて藤井の返事を待つたりした。
「さア……」
藤井は、にや/\と笑つてゐた。
「ケチ臭い顔をするない! チヨツ、面白くねえ、しみツたれ! 折角ひとが愉快にならうとすれば、直ぐに厭な思ひをさせやアがる、何でエ! それが如何したといふんだ!」
彼は、そんなことを云つた。自分が、ケチ臭くて、しみツたれで、小心翼々で、面白くなくて堪らなかつたのである。
「おい、憤るなよ――」と、藤井は云つた。
「第一俺は、ヲダハラだなんていふ名前からして気に喰はない! あの村の奴等の面で、落つきのある野郎が一人でもあるか?」
大分、親爺に似
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