廻転しはじめた水車の音や雷鳴に消されて何の判断もつかなかつたが、どうもそれは炉傍で仁王のやうな腕を組んでゐる雪五郎の喉から洩れでるものらしい――と思ふと私は、突然、(もの忘れ河)のしぶきを浴びた野鹿の化身となつて、一声高く不思議な叫び声を挙げるやいなや、岩ほどの雪五郎の坐像に突きあたつて、その頭部となく背中となく滅多打ちに、ぼかん/\! と打ち叩いた。



底本:「牧野信一全集第四巻」筑摩書房
   2002(平成14)年6月20日初版第1刷発行
初出:「中央公論」中央公論社
   1931(昭和6)年12月1日発行
入力:宮元淳一
校正:門田裕志、小林繁雄
2008年1月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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