善の研究
西田幾多郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明《あきらか》にした
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)今度|書肆《しょし》において
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#天より32字下げて地より3字上げで]西 田 幾 多 郎
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序
この書は余が多年、金沢なる第四高等学校において教鞭を執っていた間に書いたのである。初はこの書の中、特に実在に関する部分を精細に論述して、すぐにも世に出そうという考であったが、病と種々の事情とに妨げられてその志を果すことができなかった。かくして数年を過している中に、いくらか自分の思想も変り来り、従って余が志す所の容易に完成し難きを感ずるようになり、この書はこの書として一先ず世に出して見たいという考になったのである。
この書は第二編第三編が先ず出来て、第一編第四編という順序に後から附加したものである。第一編は余の思想の根柢である純粋経験の性質を明《あきらか》にしたものであるが、初めて読む人はこれを略する方がよい。第二編は余の哲学的思想を述べたものでこ
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