は有るまいと自慢じゃないが思われる、余は内よりも先に外の有様を検め度いと思い、生垣に添うて一廻り巡って、終に裏庭から堀端へ出て土堤を上った、土堤を猶も伝うて行くと、読者の知っての通り、お紺婆を殺して牢死した殺人女輪田夏子の墓が有る、先に怪美人が此の墓に詣でたのを見て余は非常に怪しんだが、今度も亦詣でて居る人が有る、イヤ詣でたか詣でぬかは知らぬが、様子有りげに墓の前にたたずんで居るが、此の人は女でない。三十四五歳に見ゆる立派な紳士だ。
余の足音を聞き、悪い所を見られたとでも思ったか素知らぬ顔で立ち去ろうとする、勿論余は引き留める事も出来ぬが、何うか其の顔を見たいと思い、顔の見える方へ足を早めた。先は真逆に逃げ走る訳にも行くまい、墓より少し離れた所で三間ほど隔てて余と顔を合わせたが、余は最早此の後十年を経て此の人を人込の中で見るとも決して見違える恐れはない、別に異様な顔ではないけれど、妙に妙に、ノッペリして、宛かも女子供に大騒ぎせられる俳優《やくしゃ》の顔とでも云い相だ、何となく滑らかで、何となく厭らしい、美男子は美男子だが余は好まぬ、恐らくは秀子とても決して好みはすまい、此の人は余と顔
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