れど強いて取り返そうともせず、唯何か合点の行かぬ様に考え「オヤ私は――貴方の来る前に何で其の薬を呑まなんだでしょう、貴方の来た時私は何様な事をして居ました」と問うた。
成ほど是だけは余も合点が行かぬ、余の来る前に何故に毒薬を呑まなんだで有ろう、毒薬を呑まぬ者が何故死人同様の有様で茲へ倒れて居ただろう、秀子は漸く思い出したと見え「アア分りました、瓶を取り出したけれど、此の世を去る前に、神に祈り此の身の未来を捧げねば成らぬと思い、長い間祈って居ました、爾して愈々と其の瓶を取り上げた時に、恐ろしい電光が差し込み、此の室まで昼の様に明るく成ったと思いました」如何にも、余が塔の時計の中から、遙の真下に此の室の石段を窺き得たのと同じ時で有ったに違いない。
秀子「其の時限り何うしたのか、私は何事もおぼえませんでした」
扨は其の時電気に感じて忽ち気を失って居たのである、直接に電気に打たるれば即死し、打たれる迄に至らずして震撼せらるれば気を失うこと、外にも例の有る所である。
其れにしても実に不思議と云わねば成らぬ、丁度毒薬を呑む間際に気を失い、余が助けに来た時まで、毒薬をも呑まず何事をも知らずに
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