未だ死なぬ、其れは――其れは大変です、何うしても死なねば成りません、皆なの為に」と呟いた。
夢寐《むび》の間にも此の語を吐くは如何に思い決して居るかが分る、殊に「皆なの為」の一言は実に秀子の今の辛い境遇を説明して余り有るのだ、其の身に懸る二重の汚名が、到底雪ぐ可き由はなくして其の筋に捕わるれば自分のみか此の家の家名にも、続いては物の数ならぬ余の名前にまでも障る訳だ、四方八方へ気を兼ねて終に死ぬる一方と決心したのは全く余が見て取った通りである、余は熱心ならじとすれば熱心ならぬ訳には行かぬ「イイエ秀子さん、死ぬるには及びません、貴女の濡衣は全く晴れました、ハイ一切の疑いが無実であったと云う事を証拠立ることも出来ます、だから私は其の事を貴女へ告げに来たのです」
秀子は初めて人心地に返った様で、怪しげに四辺を見廻したが、漸く我が地位を思い出したと見え「アア分りました、茲は猶だ塔の底でしたか、けれど何して貴方が茲へ来る事が出来ました」問う声は依然として細いけれど余ほど力は附いて来た、余「ハイ何うしてとて、貴女の行く先も目的も凡そ推量が附きましたから後を追っ掛けて来たのです、ハイ貴女が茲へ来た
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