る様に音もなく裂けて来る。
此の時、大方蝋燭が盡き、殆ど手に持って居るが六かしくなったから、更に新たなのを点け替て、此の人の頭の方を検めに掛かったが、余は尻餅を搗《つ》かぬ許りに驚いた、何うだろう、人と思ったのは幾年を経た骸骨で、晒しも切らずに黒く固まって居る、アア骸骨が錦を着て塔の底に寝て居るとは聞いた事がない。
けれど余は直ぐに思い出した、此の骸骨が昔此の幽霊塔を立てた此の家の先祖に違いない、塔の底へ這入ったまま、出る事が出来ずして、助けを呼びながら死んで了い、其の死骸は今日まで取り出す事が出来ずに在ると世の伝説に残って居るのが此の不幸な骸骨である、死ぬるまでに何れほどか残念であったやら、何れほどか悶いたやら、定めし其の恨みが今も消え得まいと思えば哀れにも有り、恐ろしくも有る、けれど余は猶此の上を見極めずに此の所を離れる事は出来ぬ、宛も目に見えぬ縄を以て死骸の傍へ縛り附けられた様な工合に、只|躄《すく》み込んで殆ど身動きも得せずに其の死骸の顔を見るに、何れほどか恨めしく睨んだであろうと思われる其の眼は単に大きな穴を留むるのみで、逞しい頬骨が最と悔しげに隆起して居るのも、其の時の
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