ない、ドダイ其の様な気の弱い事は思い出しさえもせぬのだ、心が全く秀子の事に満ち塞って居るのだから思い出す空地もないのだ。
 何でも何所かに秘密の路が有ろうと蝋燭を振り照らして改めると、聊か思い当る所が有る、時計の音と共に揺いた彼の緑盤の裏に、大きな鉄の鎖が附いて居る、何の為の鎖だろうと第一に怪しむ気が出た、緑盤の動くと共に此の鎖も動く事は必然だが、爾すれば鎖の先に何物をか繋いであって、其の物も亦動くで有ろう、此の鎖が何よりの手係りで有ると、其の鎖を握って引いて見ると、勿論ビクとも動きはせぬけれど、ズッと此の室の奥の方まで行って居る事は分る、奥の方の何所へ行って居る、隘い所に身を屈めて深入りして見ると、分った、鎖は一個の鉄の歯車へ着いて居る、此の歯車が廻るに従い鎖が之へ捲き附いて短くなるから夫で緑盤が揺くのだ、シタが此の歯車の歯は何の為に附いて居るだろう、更に他の車を廻す為か或いは他の車に廻される為としか思われぬ、爾だ此の歯車の次にズッと小さい歯車が有り、其れから又鎖を引いて、其の鎖の端が横手の石の壁へ繋いで居る。
 是は不思議だ、石の壁が動けば兎も角、若し動かぬなら此の鎖も動かぬから小
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