より又二寸多く、四時は又夫よりも二寸を増し凡そ八寸程開いた、此の割で見ると五時には一尺、六時には一尺二寸爾して十二時には終に全く開いて了うのだ、必ずしも秀子が機械を狂わせた訳ではなく、機械の本来の仕組が爾成って居るのだ。
 斯う思うと共に余は二個の事を発明した、其の一つは、秀子が此所を潜ったのは朝の十時から昼の十二時までの間である、即ち余が茲へ来るより少し許り前であった、十時より前には緑盤の隙間が狭いから如何に女の優かな身体と雖《いえど》も這入る事の出来なんだ筈である、其の二つは、余が潜るにも今夜の十時以後でなくばならぬ、十時には二尺開くだろうから、何うか斯うか潜れよう。今から、十時まで空しく待つとは殆ど堪え難い所である、けれども待つ外に仕方がない、十時までの間に塔の底で、秀子の身が何の様になるかと思えば真に矢も楯も耐まらぬ思いである、けれど力の及ばぬ事は嘆いても詮がないゆえ、漸く我慢して十時を待つと云う事には決心したが、さて斯うなって見ると、初めて自分の身体が一方ならず疲れて居る事が分る、腹も空いて居る、眠さも余ほど目に借り越しになって居る、今まで夫を感ぜずに悶いて居られたが不思議で
前へ 次へ
全534ページ中451ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング