思いました、ハイ憎い二人、イヤ貴方と秀子とを取り殺して遣り度いと思いました」
 幾等嫉妬の為にもせよ人間の道を踏み迷うに至っては、全く一人前の善心がない者で、善よりも他の念が強いのだから、即ち悪人である、斥けねば成らぬ人間である。それは兎も角も、何しろ余に取っては極めて迷惑な、又極めて危険な問題であるから余は之を聞き度くない、余「イヤ浦原さん過ぎ去った感情はお互いに云わぬ事とし、事実だけを伺いましょう」冷淡過ぎるかは知らぬけれど、余は明らかに斯う云い切って、爾して自分の掛けて居る椅子を少しばかりお浦の傍へ引き寄せ、願いの通り握らせる様に、余の手だけを差し延べて遣った、お浦は幾分か力を得た様子で「ハイ感情は云う丈気分を損じます、忘れましょう、忘れましょう、爾して事実だけ申しましょう」とて余の手を取った、云わば頼みの綱に縋る様な風である。

第九十九回 今以て大疑問

 余は早く合点の行かぬ廉々《かどかど》から聞き度いと思い「全体貴女が、何うして彼の書斎で消えて了ったか、其が今以て大疑問と為って居ますが」と言い掛けるに、お浦は「イイエ、事の初めから順を追うて申しましょう」と断り、さて愈々説
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