た》まらぬ気でもするのか、夫とも外に気に掛かる所が有るか知らんと、余は疑う色を推し隠して「秀子さんは」と極く軽く問うた、夫人は狐猿の顔を拭い終わって「サア昨日何処へか出て未だ帰りませんが、倫敦から電報なども来て居ますから、早く帰れば好いと思って居るのです」云う様が毎もの嘘ではないらしい、是で見ると秀子が此の家へ帰り着かぬのが本統だろう、夫とも夜が引き明けに、丁度番人の怠って居る時に着き、其のまま自分の室へでも隠れたのか知らん。
若し彼の電報を見たのなら、兎に角余が安心させる様に認めて置いたから落ち着いて居るだろうが、彼の電報が猶秀子の手に渡らずに有って見れば、当人は今以て心も心ならずに居るで有ろう、早く逢って安心させて遣り度い、イヤ今は安心させる訳にも行かず、逢えば唯余に愛想を盡す様に仕向けねばならぬのだけど、夫でも逢い度い、逢って顔見ねば何だか物足らぬ所が有る。
是から余は秀子の室へも行き猶家中をも尋ねたけれど、秀子の姿は見えぬ、此の上は再び停車場へ引き返して、誰か秀子の下車したのを見た者はないか聞き合わして見ねば成らぬ、トは云え余自ら此の家へ帰り、猶生死の程も分らぬ叔父の病気を
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