証拠と云うのを世に示そうでは有りませんか、世に示して秀子の濡衣を乾して遣りましょう」権田は何故か返事をせぬ、余は迫き込んで「エ、権田さん、二人で声の続く限り世間へ対して叫ぼうでは有りませんか、殊に秀子は今既に養父殺しと云う二度目の恐ろしい嫌疑をさえ受けて居りますから、差し当りアノ森主水にも其の証拠を示し秀子が少しも罪など犯す汚れた履歴でない事を知らせ、此の差し掛かった厄難を払って爾して取り敢えず秀子の身を安泰にして遣りましょう、サア其の証拠は何所に在ります茲へお出しなさい、サア茲へ」
 権田は重々しく落ち着いて「其所が即ち相談です、貴方と私との間に確たる相談の極った上でなくては」余「相談は極ったも同じ事です、私は何の様な相談にでも応じますよ」権田「そう早まらずと、静かに私の言葉からお聞き成さい、第一貴方は秀子を救い度いと断言しますか」余は燥《いら》って「何で其の様な余計な事をお問い成さる、秀子を救わずに何としましょう」権田「所が之を救うには余ほどの決心が要るのですよ、非常に辛い事を耐えねば可けませんよ」余「何の様な事でも平気で耐えます」権田「宜しい、其の一言を聞けば安心して言いますが、
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