でも自分の室へ随意に出入りの出来る様に合鍵を渡してある事も之で分る、余「オヤオヤ若し自殺でもする積りで馳け出したのでは有るまいか」権田「馳け出したには相違ないが自殺の為では有りません、自殺する様な気の弱い女なら今までに自殺して居ます、深く自分に信ずる所が有って、其の所信を貫く為に牢まで出たほどの女ですもの、容易に自殺などしますものか」余「兎に角も其の後を追い掛けねば」権田「お待ちなさい。何でも是から何処かへ身を隠す積りでしょうが、非常に用心深い気質ですから、後で人に見られて悪い様な書類や品物を焼き捨てる為に幽霊塔へ引き返したに違い有りません」余「では私は直ぐに幽霊塔へ帰ります、兎に角、停車場まで行って見ます」
 早や立ち上ろうとすると権田は又も引き留めて「ナニ幽霊塔へ行ったなら、此の通り森主水を押さえて有るから秀子が直ぐに捕縛される恐れはなく、猶だ一日や二日は安心です、緩々私と相談を極めた上でお帰りなさい」余「左様さ愈々幽霊塔へ行ったのなら一時間や二時間を争う訳では有りませんが、若し幽霊塔へ行かずに直ぐに出奔したなら大変です、兎に角停車場まで行き、見届けて来るとしましょう」権田「ではそ
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