のみ聞いて何れほどか辛く感じたであろう、定めし居|耐《たた》まらぬ想いをしたに違いない、いま物音をさせたのも余りの事に聞きかねて気絶しかけ、身の中心を失って蹌踉《よろめ》いた為ではあるまいか、何うも其の様な音であった。
斯う思って見ると、秀子は全く身を支えかね、今や仆《たお》れんとする様である、其の顔色の青い事其の態度の力なげに見ゆる事は本統に痛々しい、仆れもせずに立って居られるが不思議である。
秀子の眼は余の顔に注いで居るか権田時介の顔に注いで居るか、寧ろ二人の間の空間を見詰めて爾して目ばたきもせずに居る、アア早や半ば気絶して居るのだ、気が遠くなって、感じが身体から離れ掛けて居るのだ。
余が斯う見て取ると同時に其の身体は横の方へ傾いて、宛も立木の倒れる様に、床の上へ※[#「※」は「てへん+堂」、156−上9]《どう》と仆れた、余は驚いて馳せ寄ったが、余よりも権田の方が早く、手を拡げて余を遮り「可けません、可けません、貴方は今自分の口で明らかに秀子を捨てて了いました、秀子の身体に手を触れる権利はないのです、介抱は私が仕ますから、退いてお出でなさい」嫉妬の所為だか将た発狂したのか権
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