の方の金庫へ納め、もっと嬉し相に頬笑みて「イヤ三千ポンドは大金です、実は私も取る年齢ゆえ、最早隠退したいと思い、数年来、金子を溜めて居りますが今の三千ポンドで丁度、兼ねての予算額に達したのです、今まで随分人を救い、危険な想いをしましたから此の一回が救い納めです、再び貴方が来《いら》しってもポール・レペルは多分此の家に住んで居ないでしょう、田舎へ地所を買い、楽隠居として浮世の波風を知らずに暮らすは何ほどか気安い事でしょう」
述懐し了って、再び第二の鉄扉を開き余と共に又中へ降り入ったが、茲は余程地の下深くへ入って居ると見え、空気も何となく湿やかで余り好い心地はせぬ、墓の底へでも這入ったなら或いは此の様な気持で有ろうか、兎に角も人間の地獄である、此の様な所に秀子の秘密が籠って居るのかとおもえば、早く取り出だして日の光に当てて遣り度い。
気の所為か手燭の光まで、威勢がなく、四辺の様が充分には見て取られぬ、けれど何だか廊下の様に成って居て、左右にズラリと戸棚がつらなり、其の戸に一々貼紙をして何事をか書き附けてあるが、文字は総て暗号らしい、余には何の意味だか分らぬ。頓て先生は、壁の一方に懸けて
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