を持って私と一緒に来るのですよ」と教え、書棚の中から厚い本を二冊ほど抜き出した。爾して其の本の抜けた後の空所へ手を差し入れたが、秘密の鈕《ぼたん》でも推したのか忽ち本箱が扉の様に両方へ開いた。其の背後は暗室になって居る、成るほど秘密の仕事をする人の用心は又格別だと、余が感心する間に先生は暗室へ入って余を呼んだ、余も続いて其の中へ這入った、スルト先生は又も何所かの鈕を推したらしいが、扉の書棚は元の通り閉じて了った。秀子を救うのと此の暗室と何の関係が有るだろう。余と先生と、暗室の中に全くの差し向いである。
第七十四回 前身と後身
余を此の暗室へ連れ込んで何をするのか、余は少しも合点が行かぬ。
先生はそれと見て説明した。「私が何の様にして松谷秀子嬢を救うか貴方には少しも分りますまい、此の暗室の中で其の手段だけを見せて上げるのです、見せて上げれば此の前に私が何の様にして嬢を救ったか、救われる前の嬢の有様は何うで有ったか、ポール・レペルの手際が何れほどで有るか総て分ります」
斯う聞いては早く其の手段を見せて貰い度い。取り分けて此の先生に救われる前の秀子の有様などは最も知り度い、扨は此の
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