余の目的を知って居るのか知らん、余は聊か気を奪われ、少し戦《おのの》く様な語調で「実は貴方が御存じの様に聞きます松谷秀子の件も大場氏から聞きましたが」と半分云えば先生は思い出した様に「アア秀子、彼の美人ですか、イイエ彼の件は何うも私の不手際でしたよ、救い方が聊か不充分で有った為、或いは今以て多少の禍いが残りはせぬかと、時々気に掛る場合が有ります、何しろ本来が美人ですから何うも六かしい所が有りました、けれど大抵の事では大丈夫だろうと思って居ます、それにしても貴方は」と云い掛けて熱心に余の顔を眺め「貴方も実に困難なお望みですよ、殆ど秀子と同じ場合で実に惜しむ可き所が有りますから私が充分の力を施し兼ねます、併し秀子の場合で御合点でしょうが、全く根本的に救うのですから決して後悔なさる様な事はありません。秀子とても其ののち何の様な境遇に遭ったかも知れませんが兎に角私を命の親だと思って居ましょう」
 余「ハイ貴方を命の親の様に思えばこそ、遙々救うて戴きに来たのですが」
 先生「では早速条件を定めて其の上で着手致しましょう。多少の出来不出来こそあれ、万に一つも全く仕損ずると云う事は私の手腕にはないの
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