って倫敦へ送り其の筋から逮捕状を得ねばならぬのですから、多分は明後日になりましょう。是は職務上の秘密ですけれど真逆《まさか》に貴方が秀子に知らせて逃亡させる様な事は有るまいと信ずるからお打ち明け申すのです。其の間に若し秀子が逃亡すれば貴方が幇助した者と認めますよ」
余「私は飽くまで其の嫌疑の無根な事を信じますもの、何で逃亡を勧めますものか、又秀子とても其の身の潔白さえ恃《たの》んで居ますもの。何で逃亡など仕ますものか」と余は立派に言い切ったけれど実は心細い。どうかして逃亡させる工風はあるまいかと思いたくはないけれど独りそう思われる。
けれど若し逃亡せねばならぬ様な身上の女なら勿論愛想の盡きた話で、逃亡させる必要もなく寧ろ余から繩を掛けて出さねばならぬが、秀子に限って其の様な事は決してない、どうしても余の力で其の潔白を証明して遣らねばならぬ、何うすれば其の証明が出来るだろう、余が唯一つの頼みとするは甚蔵から聞いた彼の巴里のポール・レペル先生だ。兎に角も此の人に相談する外はない。若し此の人が深く秀子の日頃を知り、決して前科者でなく、決して毒薬など用うる女でないといえば此の土地へ伴うて来
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