「グラニル」とは曩《さき》に余が刺された時、其の刃に塗って有った毒薬である事を思い出し、其の旨を森に告げると森は点頭いて「其処ですて、何しろ此の様な珍しい毒薬に、少しの間に二度も而も同じ家で出会わすとは余り不思議ですから充分手下に調べさせましたが、其の出所が分りました。此の村の盡処《はずれ》に千艸屋《ちぐさや》と云って草花を作って居る家の有るのは御存じでしょう」成る程余は知って居る、曾て其の家の小僧が偽電報の件を余に知らせて来て十ポンドの褒美を得て去った事まで此の話の初めの方へ書き込んで置いた積りだ。余「ハイ知って居ます」森「其の家の主人はお皺婆と云い、昔印度に居た事も有り、今でも印度の草を作って居ます、其の中にグラニルも有るのです」余「ソレがどうしました」森「ソレから此の家に居る人でアノ家へ折々行く人が有ります」余「それは誰です」森「秀子さんの附添虎井夫人です」余「夫人は病気ですが」森「イエ病気は既に大方直りました。昨日も此の夫人がアノ家へ行ったのです」余「何の為に」森「アノ婆が狐猿の飼方や其の病気の時の手当て方をも心得て居るとの事で、毎も表面はそれを問いに行くのです」余「グラニルを
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